Scene2

「優しく言ってるうちに出しときゃいいんだ……よッ!」
 大柄な男が、肩を引っ掴んだまま楽しげに言うと、父の腹へ強烈な膝蹴りを叩きこんだ。
 父は苦しげに呻き声を上げながら床へ唾をまき散らすと、男の二撃目を再び腹に受けた。
「払う。払います。払いますから……!」
 母が必死に止めようと大柄な男に縋り付くが、軽々と弾き飛ばされる。今日の取り立ては、いつにも増して酷い。
「そう言っていつまで待たせる気だ? あ! 言ってみろよ!」
 男が父の後頭部を掴んで、テーブルに叩きつけた。凄まじい音が部屋の中に響いた。
「サラ金なんて他に幾らでもあんだろーが! さっさと借りて返せ! 利息もしっかりなぁ!」
「で、でも、ま、ま、まともなところは、もう、貸してくれなくて……」
 父の頭がまたテーブルに叩きつけられた。彼の額から溢れ出した血がテーブル中に広がり、床に滴る。御津は体が震え始めるのを感じながら、周囲を窺った。美奈の姿が見当たらない。別の場所に隠れているのだろうか。父の次は自分かもしれない。その次は美奈かもしれない。守らなければ。この場から逃がさなければ。せめて、妹くらいは……。考えるが、体が震えて動かない。
「……はぁ? だれが健全に返済しろなんて頼んでんだ。よぉ? なめてんのか? お? 顔あげろ!」
 今度は男の標的が母に向かった。化粧気のないくたびれた顔に男の顔が近付き、ぼさぼさの髪を掴みあげ、手元から取り出した折り畳みナイフを突きつけた。
「……保険金で払うか?」
 殺されるのかもしれない。情けない両親だが、優しいのは確かだった。守りたい。お願いだ。殺すな。殺さないでくれ……! 願望も虚しく、体の震えは増すばかりで一向に動かない。情けなかった。情けなくて、どうしようもなかった。
 しかし、ナイフが母の首に食い込んだとき。御津は瞠目した。どこに行ったのかと目で探していた、守ろうとしていた美奈が、台所から飛び出し突進し、男の背中に覆いかぶさっていた。
 彼女は無言のまま、荒い呼吸を伴いながら、御津と同じく瞠目している大柄の男の背から包丁を引き抜き、それから回数も分からないくらい滅多刺しにした。



Scene2《九月十八日夜〜九月十九日午後》

「今日は少しだけ対象の挙動がおかしかった。警戒を強めろ」
 資料を渡しながら川村が言う。
「これは俺の感覚的なものなんだが……あ、那岐原には言うなよ? 対象が妙に浮き足立ってるというか、そわそわしてるというか……」
 自信を窺せず言いよどむ彼に、御津は話の途中で笑みを浮かべた。那岐原を疑いもしないことに苛立ったのも確かだったが、それがこの人のいいところだ。軽度の不信くらいで信頼は揺らがなかった。
「分かりました。那岐原は信じないでしょうけど、川村さんの勘は良く当たりますからね。俺だけでも警戒強めておきます」
「……助かる」
 そう言うと、彼は手近な石段に腰を下ろした。深夜の公園には誰もいない。片耳にイヤホンを差し込んだ御津もまた、隣に座った。残業しているのか、仕事場に籠った対象にまだ動きはない。
「そろそろお別れかもな。このシンガポールとも」
 川村はポケットから煙草を取り出し銜えながら言うと、ライターで火を点け、溢れだした煙を大きく吐いた。
「そうですね。川村さんの勘が、正しければ」
「あまり頼られても困るが……。まあ、挙動がおかしかったのは確かだからな。奴も人の子だ。どれだけ気を付けていても尻尾を出しちまうもんだ」
 シンガポールの公園は熱帯の植物が自生していて、日本の公園とはだいぶ風景が違う。一通り辺りを見渡してから、御津はタバコを美味しそうに吸う川村に視線を戻した。
「……そうだといいんですけど。この仕事が終わったら、俺、ここをやめようと思うんです」
「やめる? 組織をか?」
 川村が素っ頓狂な声を出した。
「……ええ。だから早く任務を終わらせたいんです」
 何を話してるんだ、という気持ちになりかけたが、しかしシンガポールにあってこのことを相談出来るのは川村以外に居らず、御津は思わず口に出してしまっていた。美奈にどうしても伝えることができないいつもの決意を、誰かに零したかった。
 四年前、美奈は人を殺し、自分はそれを止めずにただ眺めていた。一刺しで止めておけば、あの男は死なずに済んだだろう。足がすくんで声すら出なかった自分は、妹が殺人を遂行するまで、黙って見ていた。罪を被った両親は自首し、二人揃って塀の中だ。いくら激しい取り立てに遭ったからと言っても、原因を追及されてしまえば両親に情状酌量の余地はなかった。父親は殺人で懲役十年、母親は殺人幇助と死体遺棄で懲役六年の実刑を受け、現在も服役している。
 御津はもう、疲れていた。隠れて生きることも、任務と称して人を公然と殺すことも、もうやりたくなかった。
「弱みを握られてるんじゃないのか? お前も」
 窺う声を発した川村に、御津は頷いた。
「もう、いいんです。罪から逃げることには疲れました。大人しく自首して、罰を受けるつもりです」
「……そうか」
「……でも、どうしても言い出せないんですよね。美奈には。あいつは俺よりも重い罪を背負ってる」
「なあ、前から気になってたけど、あいつとお前、本当は夫婦じゃないんだろ?」
「……どうしてそれを?」
「見てれば分かるさ。夫婦にしては仲が良すぎる」
 彼は笑った。
「俺は駄目な夫だったなあ……死んでいく女房に、何もしてやれなかった」
 川村の口から吐き出されたタバコの煙が御津の目の前を揺蕩(たゆた)い、風に吹かれて消えた。
「……川村さんがここに入ったのって、弱みを握られた、とかじゃないですよね。なんとなく、分かります。他の人たちとは、雰囲気が違うから」
「はっ。お互いお見通しってわけか」
 彼はもう一度笑ってから、携帯灰皿にタバコを捻じ込んだ。
「お前が辞めたいって言うなら止めない。だけどな、美奈を誘うのはやめておけ。あいつは……なんかこう、危うい。女ってのはお前が思っている以上に厄介だ。また、勘だけどな……」
「気遣いありがとうございます。でも、俺はあいつに人殺しの任務はやらせたくない。罰を避けるために罪を重ねるのは、やっぱり間違ってるはずです。その前に、一緒に辞めようと思います……」
 御津は立ち上がって、公園の中央にある噴水を見据えた。
「……ま、そこまで言うなら応援してやるか。頑張れよ」
 川村もまた立ち上がり、御津の肩を軽く叩いた。

 御津が去った後、川村は木陰に目を移し、立ち止まった。
「監視要員の監視なんて、趣味が悪いですね」
 川村が言うと、男は木陰から姿を現した。
「お前の班から、どうも情報が漏れているようだ。お前を責めるつもりはないが、少しは疑ってかかれ。特に早瀬御津に早瀬美奈……。言動も危ないな。那岐原はともかくとして、場合によっては奴らを……」
「那岐原についても、報告があります。御津が、居酒屋で対象と那岐原が接触しているのを目撃したようです。これについては、どう説明なさるおつもりでしょうか? 私としては、どちらも信じたいのですが……」
「それは私も与り知らぬことだ。早瀬の策略かもしれんな。早瀬を消すか那岐原を消すか、あるいは双方か……。判断はお前に任せる。然るべき措置を取る場合、増援を送る。要請は手際よくしろ」
 彼はそう言うと、足音もなく公園を後にした。川村はその背中をしばらく睨みつけたあと、憂慮すべき事態に直面したことに、大きなため息を吐いた。



***



 川村と別れた御津は、対象の監視を開始した。確かに浮き足立っている様子だったが、特に異常はなかった。それどころか、いつにも増して警戒が強く、何度も周囲を窺っていた。カラ振りか、と溜息を吐いたが、那岐原と交代した後も、御津は家に帰らなかった。那岐原への疑心は、消えたわけではない。川村も疑わざるを得なくなる、決定的な証拠を掴みたかった。会合現場をカメラにでも収められれば言うことはないが、流石にそれはもう無理だろう。監視班共用の指向性マイクには、指向性マイクが拾う音声データを御津の所持する盗聴器具から受信できるよう仕掛けを施してから渡しておいた。それを磁気ディスクに録音しながら、御津は朝まで那岐原を監視していた。
 しかし今回はそれらしい動きを見せず、監視は終わり、美奈が姿を現した。御津はそこで諦め、帰宅した。
 合鍵を使って部屋に入ると、だらしなく散らかった部屋が目に付いた。昨晩から戻っていないだけで、美奈の食器と雑誌、CDなどが部屋中に散乱していた。一つ一つ拾い集めて部屋の隅に積み上げてから、御津は布団を広げ、その上に胡坐を掻いた。新聞に手を伸ばし適当に読み漁った後、どうにも落ち着かない御津はテレビをつけた。Channel News Asiaはアジア圏を中心に世界各国のニュースを取り上げている。生憎登場するのはテロのニュースばかりで、日本は蚊帳の外だ。時折、コメンテーターの羨む声も聞かれるほど、日本ではテロが少ない。
 自分が今やっている監視のお陰で、少しはこのニュースが減るのなら、この仕事を続けてもいい気もした。どうせ自分が辞めても、他から引っ張られてきた奴が代役に充てられる。しかし、自分一人ならまだしも、美奈がいる。美奈には出来るなら、普通の生活に戻って欲しかった。勝手だと言われるかもしれないが、それがあの時彼女を止められなかった自分にできる、唯一の方法だと思っている。
 御津は、決心を固めた。今日こそは、言おう。

「ただいま」
 玄関の方から、扉の閉まる音が聞こえた。時計に目をやると、午後二時になっていた。
「あ、おかえり」
 テレビから視線を外すと、ハンバーガー店の袋を持った美奈が立っていた。
「これ、一緒に食べよう。お腹すいてるでしょ?」
 彼女は笑みを携え、袋を軽く上げた。
 これがあるから、言い出しにくい。彼女は真面目な話をするには不向きだ。組織に入れと脅された時も、この笑顔を見ているとなかなか言い出せなかった。
 御津はテレビを消し、台所のダイニングテーブルに移動した。
「動き、なかった?」
 ハンバーガーを齧りながら訊くと、美奈は少し考えるような仕草をした後、
「対象は動きがなかったけど、那岐原さんの様子がおかしかった」
 と言った。
「那岐原? 対象と接触でもしたのか?」
「うーん……対象とは接触してないけど、何か、任務交代の後に、イスラム系の人と話してたのを見た。ただの、情報筋かもしれないけど。でも、あの人、イマイチ信用できないよね……」
 ポテトを食べ進める美奈が、腑に落ちないという様な顔をした。
 やはり那岐原は、内通している……? 御津は昨夜の対象の警戒ぶりを思い浮かべた。言い知れぬ不安が脳裏を過る。川村に義理立てしてこの任務が終わったら、と考えていたが、この任務が終わるまで、待つ必要があるのだろうか。今すぐにでも逃げ出すわけにはいかないだろうか。
「御津?」
 美奈がテーブルを指先で二回叩いた。御津は視線を美奈に戻し、いつの間にか休めていた手で引き寄せ、ハンバーガーを齧った。
「どうしたの? 御津がぼけっとしてるのはいつものことだけどさ、最近酷いよ?」
 彼女は笑いながら言うと軽く首を傾げた。
「あの……さ、大事な話があるんだけど、いいか?」

 
「この仕事を、辞める?」
 笑みを消した美奈が、言葉の意味を理解できないとでも言いたげな口調で語尾を釣り上げた。
「ああ。今回の監視が終わったら、やめる」
 御津はようやく、いつもの決意を口から吐き出すことに成功した。
「もう、無理なんだ。……あいつの、あの男の姿が、目に焼き付いて離れない。美奈が殺して、俺が棄てた、あの男の……」
 時折、夢に出る、あの男の姿。そして、自分たちの代わりに服役している両親。罪を覆い隠すために人殺しを重ねていく任務。
 御津は、精神的に追い込まれていた。 
「罪は全部俺が被る。川村さんなら、上にもうまく話を通してくれるだろう。俺達、大して成績も良くないしな。もしやめられたら、お前は、普通の生活に戻れ」
 一度口をついて出れば、後は簡単だった。何度も考えてきたことが勝手な言葉に変換されて吐き出されていく。
 そこで言葉を区切り、美奈の反応を待とうとすると、
「……罪を、全部被る? それで。それで、私が喜ぶとでも思ったの?」
 彼女はテーブルに勢い良く両手を置いて、それから立ち上がった。顔を俯けているために表情は読み取れないが、声音は怒っていた。
「お前はお前で、幸せになる方法を探せよ。母さんや父さんに、いつまでも罪を着せ続けるわけにはいかない」
 冷静に言うが、美奈は首を大きく左右に振った。
「いいよ! あんな人たち放っておいて。借金漬けの生活を始めたのはあの人たちなのよ? 御津と……兄さんと私は被害者でしょ。あの人たちが罪を被るのは当然じゃない! ねえ、このまま一緒に生活してようよ。御津も、私も、罪をかぶる必要なんてない。十年も逢えなくなるなんて、絶対に嫌……!」
「あの人たちはそれでも必死に生きようとしていた。それを俺らがぶち壊したんだ……。かばってくれた時の目を俺は忘れたことはない。心の底から親愛に満ちた目だった。俺はあの目を、裏切れない。このままのうのうと生きていたいとも思わない」
「……だから? だから何? 毎日毎日借金返せって家に乗り込んできて、人の家を滅茶苦茶にして、私にまで手を出そうとした……あんな奴、死んで当然よ! 学校で私がどんな目にあってたか知ってる? 兄さんには気のいい仲間がいたからいいかもしれないけど、私には……」
 美奈は体を震わせた。
「私には……兄さんしかいなかった。周りは皆、敵だった。サラ金の取立人も、取立人を呼び込んだ両親も、それを理由に会話すらしてくれない奴らも……」
 掠れた声が耳朶を打つ。言葉を発する勇気が萎えそうになったが、御津は続けた。
「でも、自分勝手な人殺しには変わりなかった。非があるのは俺らの両親で、取立人にはない」
「……」
「今の状態は異常なんだ。だから、俺が名乗り出て、終わりにする。あの時は未熟だった。自分たちのしたことの意味が分かってなかったんだ。でも今は違う。任務で人を殺したときには手が震える。相手は生きていた。あの借金取りだって、生きていたんだ。もう無理なんだ。我慢できない。お前はまだ殺人の任務には関わってなかったはずだ。だから今しかない。今しか……」
「……勝手な」
「……分かってくれよ。俺は、こんな生活に、もう耐えきれない。修正はまだ利くはずだ。美奈、お前はまだ十七だろ? お前はせめて、これ以上殺人に……」
「勝手な……勝手な理屈並べないでよ! せっかく逃げられたんだよ? 何で今更そんな……そんなこと言い出すの? 私は殺しだって出来る。御津が……御津が、居るなら」
 両手を机についたままの美奈から、テーブルに涙が滴り落ちた。
 御津は戸惑いながら頬を掻いた。
「だから、それが異常なんだって……。あんな狭い町の中にあった実家だけが、あの場所だけがすべてじゃないんだ。今は、シンガポールにだって来れてる。……広いんだ。世界は。俺らが思ってる以上に。今のお前なら、友達だって作れる。恋人だってできる。住む場所も、何もかも、自分の手で選べる。一回、俺から離れてみろよ。そんなに頼られると、俺、どうしていいか、分かんなくなる……」
 そう言うと、御津は立ち上がって椅子の背を軽く押した。しばらく黙って美奈を見つめていたが、やがて視線を外し、布団のある部屋に戻った。
 どうすれば美奈を説得できるのか、分からなかった。
 頭を冷やそうと布団に座ると、台所から美奈も出てきた。
「……分かってるの? 十年だよ」
「分かってる。……犯人だと証明できる物証だけ、組織の仲介人から警察に渡して貰う。凶器に付いた指紋は、生活痕の範囲内だ。問題ないだろう。美奈のことは伏せて貰うから、心配するな」
「やめて……そんなことするのは、絶対に」
 隣に座り、彼女は手を御津の膝に乗せた。
「御津が行くなら、私が行く」
 はっきりと意思を湛えた目が、射た。御津はやりきれなくなって布団に視線を落とし、怒鳴った。
「だから! 分かれって。美奈は行くな。俺だけでっ……!」
「嫌だ! 絶対に嫌だ。私には御津しか……」
 その声に顔を上げようとすると、肩が強く押された。不意打ちを喰らった御津は、布団の上に仰向けになった。上から、美奈の長い髪が顔を覆った。
 Tシャツの襟元がぐしゃっと掴まれ、美奈が強引に唇を重ねた。舌が唇をなぞる。御津は慌てて腕に力を入れ抑え込みを外し、逆に布団に押し付け返してから、立ち上がった。
 赤くなった顔をどうにか戻して、御津は唇を手の甲で拭った。
「だから、違うんだって。それは、家族に対してのものじゃない……。あーもう……何て言えば分かってくれるんだよ。美奈、それは、家族に向けるものじゃないんだ。俺しか同年代の男がいなかったから、美奈は勘違いしてるだけなんだよ……」
「分かんない。分かんないよ……御津の言ってること」
 布団に仰向けになった美奈が、顔を歪めて、再び泣き始めた。
 その顔が、いじめられて帰ってきていた子供の頃の美奈と重なった。
 同じ境遇のはずなのに、自分には友達がいて、美奈には居ない。何も言えなくて、強く抱きしめてやることぐらいしかできなかった。
 あの頃は家族としての表現だった。しかし今それをやってしまえば、違う気がした。
「十年経っても、美奈のこと、忘れたりなんかしない。手紙も書ける。面会だってできる。模範囚なら獄中で過ごす時間も短くなるし、裁判までに時間だってある。刑務所から出られたらまた、話そう。何分でも、何時間でも付き合ってやるから。その時、お前の幸せな話を、飽きるほど聞かせてほしい。その頃までには、きっとわかる。家族と、恋人との違いも」
 嗚咽が、少し小さくなった。腕で目元を隠していた美奈が、腕を退かした。
「任務はまだ長引きそうだろ。それまで、いっぱい話そう。それじゃあ、駄目か?」
 御津は手を差し出した。
「……もういいよ。反論するの疲れた。御津、強情すぎ」
 美奈が手を取ったので、御津は彼女を引き起こした。
 彼女は鼻水を強く啜ってから、目元を擦った。
「それにしても、御津、可愛かったなぁ。顔、真っ赤だったよ」
 彼女は茶化すように言うと、笑った。
 それを見て、御津は溜息を零した。
 彼女は真面目な話をするには不向きだ。
 しかし、話をした後には、いつも救われるのはこちらだった。

 監視に、あと、何日かかるかは分からない。分からないが、この時間を大事にしていこうと御津は思った。
 あと少し……あと少しで、大きく反れた歪な道を、元に戻すことができるはずだった。




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